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石巻支援活動に見る被災地支援の新たなカタチ

NTTデータグループは、東日本大震災で被災した
宮城県石巻市の復興支援活動を継続しています。
その現在を追いながら、変化する支援活動のあり方について考察します。

被災で深刻化する地方の課題
拡大するテクノロジーの使命

止まらない高齢化と人口減

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2016年11月22日早朝、福島県沖を震源とする震度5弱の地震が発生し、高さ1メートルを超える津波が東北湾岸地域に到達しました。東日本大震災の余震とされたこの地震によって、日本中が5年前の3月11日の記憶を呼び起こし、被災地に向けた想いを、さまざまに巡らせたことと思います。

その数日前に当たる11月18日からの3日間、宮城県石巻市にはNTTデータグループの社員、約20名の姿がありました。彼らの目的は、同市の復興支援活動にITの知見を活かせるボランティアとして参加することです。かねてから協力関係にある「一般社団法人日本カーシェアリング協会」の拠点へ伺い、協会が取り組む被災者支援のフィールドワークへ参加したほか、地元の「石巻専修大学」の学生と協会と共に、今後の復興に向けた支援活動の方向性についてワークショップ形式による検討会を行いました。

 日本カーシェアリング協会の拠点で、集まった参加者に活動の主旨を説明する、吉澤武彦 代表理事

日本カーシェアリング協会の拠点で、集まった参加者に活動の主旨を説明する、吉澤武彦 代表理事

石巻が抱える他地域との共通の課題

震災発生から5年の歳月が流れ、社会インフラや暮らし、経済の復旧が進むうちに、石巻市での“復興支援のあり方”は変化しています。震災発生直後は、破壊された広範な地域の機能を復旧させること、被災者の命をつなぐこと、そして被災者の生活を立て直すことに、ボランティア活動の力点が置かれていました。しかし今日では、活動の主眼は、震災によって深刻化した地域社会の問題解決に向けられています。その問題とは、高齢化と高齢者の孤立、人口減・働き手の流出という、全国の多くの地方自治体に共通する問題にほかなりません。

石巻市は、東日本大震災で壊滅的な被害を受けた地域です。東京23区と同様の広さ(554.58平方キロメートル)に約16万3,000人(2010年9月末時点)が暮らしていましたが、震度6強の揺れと高さ8.6メートルの津波に襲われ、3,181名の貴い命が犠牲になり、419名の方が行方不明となりました。震災によって全壊した建物は2万棟を超え、半壊・一部損傷の建物を加えた合計は5万6,700棟強に上っています

それから5年強の歳月が流れ、市の経済は震災前の水準に近づきつつあります。

津波によって市内44漁港のすべてが被災し、漁船2,762隻が失われる大打撃を被った水産業の水揚げ量も、2015年の時点で震災前の8割(10.6万トン)のレベルに回復し、同じく大打撃を受けた水産加工業の製品売上高も2015年時点で震災前の7割強の水準に達したとされています

石巻市中心部の高台日和山公園から望む、復興が進む旧北上川河口付近の現在

石巻市中心部の高台日和山公園から望む、復興が進む旧北上川河口付近の現在

道路・堤防・公共施設、住まいなどの再建・新設も進み、仮設住宅(応急仮設住宅:全7,153戸)での暮らしを余儀なくされる人も、ピーク時の1万6,788人から6,459人(2016年9月時点)へと減少。さらに、自力による住まいの再建が困難な人のために市が用意する復興公営住宅(以下、復興住宅)の建設も徐々に進展し、2016年9月時点で85地区2,715戸(最終計画戸数4500戸) への入居が始まっています

復興しても人口流出が止まらない

その一方で、高齢化・人口減少の流れに歯止めがかかりません。2016年11月時点での石巻市の人口は、震災前(2010年時点)よりも約1万6,000人少ない14万7,780人。この数には、震災で犠牲になった方や生活のために転出を余技なくされた方も含まれていますが、震災発生直後に約1万人の人口が減少したあとも、石巻市の人口は毎年1,000人のペースで減り続けており、市の人口密度は東京の100分の1へと限りなく近づいています。

※石巻市・住民基本台帳による人口推移を基に作成 ※2012年以降は、外国人居住者も合算

また、人口の年齢別構成比(2016年10月末時点)を見ると、生産年齢に当たる15歳~64歳の比率は6割弱(58%)でしかなく、65歳以上では30.7%、うち75歳以上が15.9%を占めます。この高齢者比率は、2016年9月時点での日本全体の高齢者比率(65歳以上:27.3%/75歳以上:13.4%)よりも3%以上高く、石巻市の高齢化の深刻さがうかがえます

※石巻市・住民基本台帳

※石巻市・住民基本台帳

このように高齢化・人口減少が止まらない理由は、根本にある原因が震災の影響だけではないからです。石巻市の人口は、震災前にも毎年1,000人強のペースで減り続けていました。仮に市の経済が震災前の水準を取り戻しても、高齢化と人口減少には歯止めはかからない可能性が高いと言えます。

カーシェアが生む地域のコミュニケーション

そうした中で、震災で住む場所を失い、仮設住宅や復興住宅に転居した高齢者は、近隣住人と交流を持たぬまま、孤立してしまうおそれと対峙しています。日本カーシェアリング協会が取り組んでいることは、自動車のシェアリングを通じて、高齢者と地域をつなぐコミュニティーをつくる試みなのです。

シェアリングのしくみは、下記の通りです。

1、支援者から提供された自動車を特定地域ごとの住民へ貸し出す
2、住民主体、つまり地域コミュニティー主体でカーシェアリングの運営を行ってもらう
3、近隣で自動車(移動手段)を持たず、通院や買い物などに困っている高齢者などの送迎に役立ててもらう

こうした助け合いの輪の中では「カーシェアリングに留まらず、自ずと住民間の対話が活発になり、さまざまなコミュニティー活動へと発展していきます。それがわたしたちの目ざす“コミュニティ・カーシェアリング”なのです」と、日本カーシェアリング協会の代表理事、吉澤武彦さんは話します。

コミュニティ・カーシェアリングのしくみ

NTTデータグループでは震災直後から石巻市の支援活動に取り組み、2012年4月には現地の雇用創出を目的とした「NTTデータスマートソーシング石巻BPOセンター」を開設しました。全国の企業からコールセンター業務やアウトソーシング業務などを請け負い、すでに約160人のスタッフを擁するに至っています。

NTTデータスマートソーシング石巻BPOセンターが入居する、石巻産業振興の拠点として設立された石巻ルネッサンス館

NTTデータスマートソーシング石巻BPOセンターが入居する、石巻産業振興の拠点として設立された石巻ルネッサンス館

それと並行して、日本カーシェアリング協会と活動をともにしながら、「多くの住民がITの便益を享受し、就労機会を後押しする環境作り」を目ざして、PC教室などを仮設住宅エリアで開催。のちには地元の大学である石巻専修大学と連携し、学生たちと共同で日本カーシェアリング協会の業務改善に向けたマニュアル作り、車両管理システム作りを進めてきました。

これは、学生たちに地域の課題に向き合わせると同時に、地域の魅力を再認識させ、より魅力的な町作りに取り組んでもらうための一策でもあります。

震災後から続くこれまでの活動を踏まえながら、年月とともに変化する課題に対して、地域を巻き込みともに考えていく取り組みとして、今回の活動に繋がっています。

※1 参考資料:石巻市『東日本大震災からの復興~最大の被災都市から世界の復興モデル都市を目指して~』

http://www.city.ishinomaki.lg.jp/cont/10181000/8235/99.hukkoujyoukyou_2.pdf

※2 参考資料:石巻市『復興5年間の歩み 取り組みの総括とこれから (平成28年3月末)』

http://www.city.ishinomaki.lg.jp/cont/10181000/8235/00_fullsize.pdf

※3 参考資料:石巻市『東日本大震災からの復興~最大の被災都市から世界の復興モデル都市を目指して~』 ※1と同資料

http://www.city.ishinomaki.lg.jp/cont/10181000/8235/99.hukkoujyoukyou_2.pdf

※4 参考資料:『石巻市人口統計・2016年11月11日更新版』

http://www.city.ishinomaki.lg.jp/cont/10102000/0040/2204/2204.html

※5 参考資料:石巻市・統計書(人口ピラミッド)

http://www.city.ishinomaki.lg.jp/cont/10102000/0040/3914/piramido1611.pdf

※6 参考資料:総務省統計局『統計からみた我が国の高齢者』

http://www.stat.go.jp/data/topics/topi970.htm

カーシェアリングの進化に
テクノロジーが欠かせない

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利用者が運営するカーシェアの体制

石巻市の面積は広く、市民の“足”の中心は自動車です。その自動車の多く、具体的には約5万台が、先の東日本大震災によって流され、失われました。そうした被災者の苦境を打開すべく、吉澤さんが自動車の貸し出しと共有の取り組みに着手したのは2011年4月のこと。

それから3カ月間、吉澤さんは自動車を提供してくれる支援者探しに奔走し、ようやく1台の自動車を確保しました。その後、法的認可を受けて日本カーシェアリング協会を立ち上げ、2011年10月から正式な活動をスタートさせました。

立ち上げの際、自動車を貸し出したのは仮設住宅に住む被災者たちです。シェアリングのスタイルは、「カギの管理」や「自動車の予約」といった運営のすべてを、自動車を共有する当事者たちの工夫に任せるという方式にしました。

「この方式を採用した結果、見ず知らずの人たちが自動車の共有を通じて新しい関係を築いていく流れが生まれました。自己紹介に始まり、身の上話を交わすようになり、のちに仮設住宅での生活が話題となり、周囲の清掃など、さまざまなコミュニティー活動につながっていく。それが自治会の創出へと発展するケースもいくつかあったのです」(吉澤さん)

こうしたカーシェアリングの効果に、仮設住宅での自治会作りに苦慮していた石巻市が着目したのです。市は「カーシェアリング・コミュニティサポートセンター」を創設し、2012年2月から、その運営を日本カーシェアリング協会に委託しました。これにより、カーシェアリングを運営してきた人たちがカーシェアリングをこれから始める人たちに、運営ノウハウや課題解決の方法を教える、という体制が築かれていきました。

電気自動車が各団体をつなげる

翌2013年、自動車メーカーから電気自動車(EV)が提供されたことで、日本カーシェアリング協会に大きな転機が訪れたと、吉澤さんは語ります。

日本カーシェアリング協会が保有するEV。協会では同様のEVを12台保有する

日本カーシェアリング協会が保有するEV。協会では同様のEVを12台保有する

言うまでもなく、EVは太陽光などの自然エネルギーで充電することが可能であり、災害時には非常用の蓄電池として活用することもできます。加えて、環境負荷も少なく、シェアリングすることはスマートシティーの実現にもつながります。そのため2014年11月には石巻市の行政・教育機関、住民団体、専門家などが「石巻エコEVカーシェアリング検討委員会」を結成。復興住宅への「コミュニティ・カーシェアリング」の普及状況とその効果を検証しながら、EVの継続的なシェアリングを可能にする持続可能モデルの検討を始めました。2015年には石巻市吉野町の復興住宅が検討委員会のサポートを受けたかたちで、太陽光発電と充電設備によるEVのシェアリングを始動させています。

今回のフィールドワークで訪れた「新蛇田地区」の復興住宅では、太陽光発電のパネルが設置され、停電時のエレベーター電力などに活用されています。しかし現状では、復興住宅のすべてにEVの充電装置が備えられているわけではありません。EV充電設備への拡充はまさに今後の課題とも言えます。

フィールドワークで訪問した復興住宅。すでに屋上には太陽光パネルが設置されている

フィールドワークで訪問した復興住宅。すでに屋上には太陽光パネルが設置されている

コミュニティー創生が社会課題を解決する

今回のフィールドワークは、復興住宅の住人の元を訪れ、移動に困っていないか、自動車が足りているか、カーシェアリングのコミュニティーに参加・協力する意思があるか否か、アンケートを行うというものでした。フィールドワークの結果からは、高齢者の住人が人との対話やつながりを強く求めていることや移動に困る人が確かに存在することが改めて確認できました。

対応した住人たちは、その多くがアンケートに快く応じたばかりか、NTTデータグループ社員と話を弾ませ、社員たちを自宅に招き入れたりするなど、人との触れあいを楽しむ、あるいは大切にする姿勢が見られました。それを見る限り、コミュニティ・カーシェアリングに対する潜在ニーズは高く、その取り組みが上手く回れば、高齢者の孤立という課題が解決される可能性が十分にあると言えます。

フィールドワーク終了後のアンケートの集計の様子

フィールドワーク終了後のアンケートの集計の様子

実際、日本カーシェアリング協会の調べによれば、カーシェアリングを利用していない復興住宅の住人は、その44%が「団地内に仲の良い知り合いはいない」とする一方で、カーシェアリング利用者は、その64%が「仲の良い知り合いがたくさんいる」と答えたとしています。こうしたコミュニティー創生の取り組みが、太陽光発電とEVの利用の活性化に強く結び付くことで、高齢者の孤立化と、環境負荷の低減・防災という社会的な課題が飛躍的に解決へと向かうはずです。

IT活用でカーシェアリングの可能性が広がる

また、自動ブレーキ/自律走行のテクノロジーも、運転する側になる人の送迎負担・不安を解消し、コミュニティ・カーシェアリングの持続可能性を高めるものと言えます。というのも、今回のフィールドワークでは、自ら自動車を運転できるにもかかわらず、年齢の高さから「他人を乗せて走るのは怖い」との不安を示す人がいたからです。

もちろん自律走行までの技術革新がなくとも、今日のテクノロジー、もっと言えばITにはカーシェアリングの利便性をさらに高める可能性がさまざまにあると、吉澤さんは指摘します。

「例えば、単純に自動車の利用記録がデジタルで把握できるだけでも、カーシェアリングはグンと楽になりますし、GPSを使って近場の自動車の利用予約が行えるようなしくみがあれば、シェアリングの利便性はさらに高まり、それによってもっと多くの課題が解決されるかもしれません。今日、モノの『所有』から『利用』へと人の価値観がシフトしており、シェアリングエコノミーが各方面で活発になっています。そのような時代の流れの一環として、コミュニティ・カーシェアリングのしくみを作りたいという企業があれば、私たちのノウハウを積極的に提供したいと思っています」

さらに、EV充電時の課金システムの構築やソーシャルネットワークを通じたコミュニティー間での対話の活性化など、コミュニティ・カーシェアリングにおけるIT活用の可能性は広範に及ぶと言えます。さらに地域の詳細な情報と地図データを組み合わせ、巧みに可視化すれば、各所でどのような問題を抱えているかについて、行政と住民の理解が進み、課題解決の政策に対する住民の合意も取りやすくなるかもしれません。

実践想定の教育で
育まれる次の担い手

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社会人と学生が集うワークショップ

先にも触れたとおり、NTTデータグループは、ITなどで地域に貢献する若い力を育成すべく、石巻専修大学と連携、日本カーシェアリング協会の業務改善に共同で取り組む活動を過去2年にわたって展開してきました。

その取り組みに協力してきたのは、石巻専修大学経営学部准教授の舛井道晴さんです。舛井さんのゼミで学ぶ学生たちもまた、この活動に参加しています。

学生と社会人が1つのテーブルを囲み、課題解決のアイデア作りに取り組んだ

学生と社会人が1つのテーブルを囲み、課題解決のアイデア作りに取り組んだ

今回も25名強の学生が集まり、社会人とのワークショップに臨みました。社会人と学生たちが一緒になって複数のグループに分かれ、日本カーシェアリング協会が直面する種々の課題、たとえば、「地域社会に貢献する」、「良質の自動車を安定して調達する」、「環境への負荷を軽減する」、「収益構造を改善し、自立化する」といった課題を解決するアイデアを考案し、発表しました。

グループごとに課題解決の施策を発表する学生たち

グループごとに課題解決の施策を発表する学生たち

社会課題に取り組む人材を石巻で育てる

「日本カーシェアリング協会の課題を解決する案を出すというのは、答えのない中で自分なりの答えを導き出す作業です。それは、社会人には普通に求められることですが、学生たちは最も苦手とする課題です。そうした課題に社会人と一緒に取り組める機会は得難いもので、そうした場を用意してくれるNTTデータグループにはいつも感謝しています」と、舛井さんは話します。

2014年からともに活動している石巻専修大学経営学部准教授の舛井道晴さん

2014年からともに活動している石巻専修大学経営学部准教授の舛井道晴さん

舛井さんによれば、この活動に参加した学生には明らかな成長が見られ、議論のテーブルの中で自分の見解を論理立てて、積極的に説明するすべと能力が身についたとのことです。今回のワークショップでも、3年前から参加している上級生たちは、社会人を前に臆することなく発言し、ワークショップの中でリーダーシップすら発揮していました。

ただ、石巻市の現状を考えれば、彼らが大学卒業後も市に残り、復興、あるいは発展に尽くすかどうかも気になってきます。

「私のゼミでは、常に石巻市が抱える課題をどう解決するかをテーマに据えています。現在の石巻市には、今日の日本、あるいは日本の地方が抱える問題がすべてあり、自分たちが暮らす場所・生まれ育った場所がそうした状況にあることを深く理解してほしいからです。とはいえ、彼らが石巻市に残るかどうかは分かりませんし、それを強制することもできません」と舛井さん。そのうえで「大学には宮城県外出身の学生もいるので、石巻市に貢献したいと考えるきっかけになるかもしれない」と続けます。

これまでの取り組みによって、石巻市の明日の担い手がどの程度増えたのかは分かりません。しかし、被災の地で社会の課題に向き合う若い力が着実に育まれているのは確かなようです。

吉澤代表理事に聞く
被災地支援のこれから

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日本カーシェアリング協会代表理事 吉澤武彦さん

日本カーシェアリング協会代表理事 吉澤武彦さん

───被災者支援にカーシェアリングのモデルを選んだ理由についてお聞かせください。

吉澤 私は、東日本大震災の直後から被災地でボランティア活動をしていたのですが、2011年4月に私の人生の師とも言える山田和尚(通称“バウさん”)から、石巻市の仮設住宅でカーシェアリングを始めてみないかと勧められたのがきっかけです。

バウさんは、阪神・淡路大震災の際に神戸元気村を立ち上げた人で、私が社会貢献活動の道に入ったのも、彼の活動や生き方に感銘を受けたからです。バウさんとは、東日本大震災が起きるかなり前から師弟関係のようなつながりが出来ていたので、師匠に言われるがままカーシェアリングの取り組みを始めたわけです。

───結果として、“コミュニティ・カーシェアリング”という石巻発のユニークなモデルができたわけですが、社会的な課題解決という観点から、その意義と可能性について改めてお聞かせください。

吉澤 このモデルの中心にあるのは人間関係で、自動車のシェアリングを通じて近隣の人と人とがかかわり、互いのことを知り、それぞれの状況がつかめるようになるのがポイントです。たとえば、石巻市では現在、地域包括ケアのコンセプトを打ち出し、地域コミュニティーの中で高齢者が互いの健康を支え合い、それぞれの健康年齢を引き上げていくという施策を進めています。背後には、友達がいて外出の頻度が高まれば、人の健康維持につながるという考え方があります。市がこの取り組みを進めるうえで、コミュニティ・カーシェアリングの意義は大きく、だからこそ市長も我々の取り組みを応援してくれています。

また、高齢化と高齢者の孤立は被災地だけの問題ではありません。都市部でも高齢化が進み、近隣住民とのつながりが持てない高齢者が増えています。地方でも限界集落の問題が手つかずのままです。その問題を解決する手段の一つが、コミュニティ・カーシェアリングではないかと考えています。

───ところで、NTTデータグループとのそもそもの出会いは何だったのでしょうか。

吉澤 NTTデータグループから支援活動を行いたいとの要望をいただき、我々の活動に参加してもらったのが出発点です。震災直後は社員の方々に毎週来てもらい、被災者への食糧の配給やシェアリングする自動車の洗浄などを手伝っていただきました。またNTTデータグループはITのプロですので我々のシステム回りも見てもらいましたし、仮設住宅の自治会役員の要望に応じてPC教室も開いてもらいました。のちに、石巻専修大学の学生と一緒に車両管理システムや業務マニュアルも作ってもらいましたが、ITのプロならではのデータの扱い方や管理の仕方には、勉強になる部分が多くあったと感じています。
さらにもう一つ、我々の活動に参加してくれた社員の方が、会社の活動とは関係なく自発的に我々の活動をサポートしてくれたり、連絡をくれたりするようになったことも、とても嬉しく感じています。

広告代理店に勤めていたこともある吉澤さん。その経験は支援活動のPRで「意外と役立っていますね。」と笑みを浮かべる

広告代理店に勤めていたこともある吉澤さん。その経験は支援活動のPRで「意外と役立っていますね。」と笑みを浮かべる

───それはボランティア活動そのものに人を引きつける何かがあるからではないですか。

吉澤 そうだと思います。そもそも人は、人の役に立ち、感謝されることで満足感や幸福感を得るように、できています。実際、私がここで支援活動を続けているのも、自分の幸せをワガママに追求した結果です。要するに、支援活動に人本来の幸福感を呼び覚ます力があり、だからこそ、我々のような団体が多くの人・企業から支援・協力をもらえていると考えています。

───最後に今後に向けた課題と展望についてお聞かせください。

吉澤 課題は組織の自立運営です。日本カーシェアリング協会として活動を継続させるには非営利事業を支える収益事業を創りながら石巻市と共に、政策的に取り組むことで、自主財源を確保していかなければならないと考えています。また、支援活動を発展させるには、より多くの人・地域からの関心を集めることも大切で、それには組織のPRにも力を注ぐ必要があります。

実際、我々のWebサイトをきっかけに、コミュニティ・カーシェアリングのコンセプトに興味を持ったオーストリアとの交流が始まっています。オーストリアは、カーシェアリングの先進国で、こうした国に我々のコンセプトを紹介し、理解してもらうことで、コミュニティ・カーシェアリングに最適なITシステムができあがるかもしれません。このように、しっかりとした発信力・影響力を持って取り組みを世の中に伝えていけば、我々のブレークスルーにつながる何かが得られる可能性が高いのです。

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