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ブロックチェーンの新しい可能性

NTT DATA Open Innovation Forum「豊洲の港から」の第二回定例会のテーマは、「ブロックチェーン」。
FinTechに限らない広い汎用性を持ち、「世界を変える技術」と期待されています。
今回は新進ベンチャー4社から、ゲストスピーカーが登壇。
ブロックチェーンの現在の状況がつまびらかに語られました。

ブロックチェーンの新しい可能性
世界を変えるのは「みんな」

課題は多いブロックチェーンの世界

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多領域から高まる関心

ブロックチェーンとは何か。端的に解説すると、ビットコインで知られるようになったシステム(アーキテクチャ)で、「分散型台帳」「分散型ネットワーク」とも呼ばれているもの。FinTechのひとつとして注目を集めたが、「中央集権的な管理者が不要」、「強い改ざん耐性」、「システムダウンに強い堅牢性」などの特徴により、金融サービス以外での活用法も模索されている。

分かりやすくいえば、データの信頼性が民主主義的に担保されるようなもので、例えば決済分野ではVISAやPayPalのような第三者機関の担保・保証を必要とせずとも、さまざまな取引ができてしまう。だからこそ「仮想通貨」として流通し得るものであり、さまざまな利用が可能なのだ。一例を挙げれば不動産取引や電気売買などで利用が想定されており、エストニアではヘルスケア記録でブロックチェーン導入が計画されている。

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ブロックチェーンは、暗号技術とP2P(ピア・ツー・ピア)ネットワーク技術を応用し、データの改ざんを困難にした分散型の記録管理技術のことであるが、素人にはよく分からない技術的な難解さもある。現在は、利用事例も少ないことから十分にこれを理解している技術者も不足しており、その意味でも発展途上の技術だと言われている。

その他にもアウトプット、リアルとの接続など、多くの課題を持ちつつも非常に高いポテンシャルを持っていることは衆目の一致するところで、「世界を変える技術」と呼ばれるようになった。現在のブロックチェーンを取り巻く状況は混沌としており、現況を初期のインターネットに比する意見もあるほどだ。これまでも社会へ大きなインパクトを与える可能性がある最新のIT技術を取り上げてきた「豊洲の港から」の定例会。この日も定員350名を遥かに超える申し込みがあり、立ち見もズラリ。IT業界に留まらず、さまざまな領域で関心の高まっていることを伺わせた。

FinTech以外では模索が続く

ゲストスピーカーはコンセンサス・ベイス株式会社・志茂博氏、株式会社Nayuta・栗元憲一氏、株式会社Sendee・加世田敏宏氏、株式会社Eyes, JAPAN・山寺純氏の4氏。いずれも金融以外でのブロックチェーンの活用法を模索しているベンチャー企業の代表だ。前半は各社からのプレゼンテーション、後半は、国際大学GLOCOMの高木聡一郎氏、NTT データの赤羽喜治氏の2氏をパネラーに交えてのパネルディスカッションを行った。ファシリテーターはNTTデータ イノベーション推進部の残間光太朗氏が務めた。

左上から時計回りに志茂氏、栗元氏、山寺氏、加世田氏

左上から時計回りに志茂氏、栗元氏、山寺氏、加世田氏

前半のプレゼンテーションでは、ゲストスピーカー各社が、ブロックチェーンを巡る現況の分析とともに、各社の取り組みを紹介した。

コンセンサス・ベイスの志茂氏は、同社が「ブロックチェーンで困ったことがあったら何でも対応」するブロックチェーン専門会社であることをアピール。コンサルティング、開発、教育セミナーを主な業務としているが、「技術だけじゃなく、ビジネスへの強みがあること」が同社最大の特徴だと語る。「どちらかと言えばブロックチェーンに対しては批判的で、あくまでもひとつの技術としてフラットに見ている」そうだ。

Nayutaの栗元氏は、「IoTとIoM(Internet of Money)を組み合わせて、新しい価値を生み出す」が自社のミッションであり、今はブロックチェーンで実現する「マイクロペイメント」で稼働するIoTプロダクトの開発に取り組んでいる、と発言。また、今後の方向性については、集めたデータが機器を操作する「アダプティブデザインによる都市」の可能性を示唆した。

Sendeeの加世田氏は、自社開発した真贋証明サービス「Chainfy」を紹介した。世界的にはダイヤモンド、ビンテージスニーカーなどの市場で実証実験が始まっている例を示しつつも、「実はブロックチェーンでやる必然性は、今は分からない」とし、「技術的に可能である=ビジネス化できるとは限らない」と、ブロックチェーン利用が、技術上の問題だけではないことを語った。

Eyes, JAPANの山寺氏は同社の事業に触れながら、医療分野においてブロックチェーン活用の可能性があることを示唆した。医療業界は「パーソナライズが進み、情報セキュアの重要度が増す」と予見、特に日本ではその意識が低く「早急に対策しなければ事故につながる可能性がでてくる」と指摘。その領域でこそ改ざん耐性の高いブロックチェーンの意義があるとした。

※1 FinTech

FinTechは金融(Finance)と技術(Technology)を合わせた造語であるが、昨今では情報技術(IT)を駆使して金融サービスを生み出したり、見直したりする動きそのものを指す。

※2 豊洲の港から

NTTデータが運営するオープンイノベーションフォーラムの名称。先進企業(ベンチャー等)、お客様(大企業)、NTTデータとの3者でWin-Win-Winの関係を築き、新しいビジネスを創発することが目的。

※3 マイクロペイメント

小額の金銭支払いの手段として考案され、最近ではクレジットカードなどの電子的支払い機構では現実的に処理できない程度の小額支払いのこと。

※4 アダプティブデザイン

レスポンシブデザインとの対比で利用される。センサーを搭載したデバイスを用いてパーソナライズされた情報を届ける、つまりユーザーのコンテンキストに合わせて表示を切り替える手法のこと。

革新的で新しい可能性に満ちたブロックチェーン

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ブロックチェーン技術を積極的に取り込む

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そして、後半のパネルディスカッションは、冒頭高木氏・赤羽氏両氏からの話題提供を挟んで、セッション本番へ。ファシリテーター残間氏の質問が急所を衝いており、個々の回答も実に興味深く、熱い議論となった。

「日本ではどの領域でブロックチェーンがブレイクすると思うか?」という問いに対しては、「日本の強みである製造業におけるサプライチェーンの強化に」(志茂氏)、「国際貿易のL/C取引の代替として」(加世田氏)、「DNSのセキュア向上に」(山寺氏)という具体的な意見のほか、「サービスとペイメントをセットにした展開」(高木氏)、「IoTのマイクロペイメント」(栗元氏)といった包括的な意見も出たが、興味深かったのは、技術以外の要素への言及があった点だ。志茂氏は「(ブロックチェーン導入には)技術者以上に調整役がいっぱい必要」と、実装の手前にある課題を指摘。
同様に赤羽氏も「サプライチェーンで導入されれば爆発的に化けてインフラとなる」とするが、「誰がどういう風に実現するか、主導権は誰がとるのか、といった、専門技術が不要な領域でうまく適用できた時点」でブロックチェーンが普及すると見る。

「これからどんな企業と組みたいのか」「今後のブロックチェーンはどうなるのか」という議論では、総じて「ブレイクスルーは2~4年後」という意見に収まり、ゲストスピーカー4氏から実証実験等も含め実行できる大手との連携を求める声が上がる一方で、慎重な意見も見られた。

志茂氏は「今ガッツリ動くと“死ぬ”んじゃないか、でも今のうちからやっておかないとトップも取れない」というジレンマを語る。「インフラもないゼロから始めているので、一社で抱え込まず、“みんなでがんばりましょう”と言いたい」。山寺氏は、ブロックチェーン自体は「優れたコンセプトだと思う」一方で、「実装側が貧弱なら結局そこが問題になる。セキュリティ・バイ・デザイン(設計段階からセキュアにしていくこと)で考えなければ」と指摘する。また、高木氏も人材不足を指摘するとともに「ブロックチェーンを動かすためのコインを“持っている”人たちがいて、“誰が利益を上げるか”を考えるときに、アプリの問題とは別に、そうしたインフラ面にも目を配らないといけない」と話す。

ここで見えてくるのは、ブロックチェーンの高いポテンシャルを持つがゆえの、一筋縄ではいかない手強さだ。ブロックチェーンには技術的な課題も多く、まだ活用事例も少ない。ただ今回も議論になったように、様々な領域での活用方法が日々、多様な場で議論され、社会インフラでの応用も検討されている。今後は新しい可能性に向けて、積極的にブロックチェーン技術を取り込んだものが最後に笑うのではないだろうか。

世界を変えるのは「みんな」

最後のメッセージでは、各人とも「世界を変えよう」と会場に呼びかける。「貨幣、国家が必要なのか、そんな世界が来る」(志茂氏)、「富の移転を引き起こすゲームチェンジャーに」(加世田氏)、「今ある世界をディストラプト(創造的破壊)したい人と一緒に取り組みたい」(山寺氏)。インターネットの普及拡大が世界のあり方を一変させたように、ブロックチェーンもまた、世界をドラスティックに変えうる力を持つ。それは革新的でさえあり、よくよく聞けば様々な課題もあるのは事実ではあるが、新しい時代到来のワクワク感にも満ちている。
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最後にフォーラムリーダーを務める名古屋大学の山本修一郎教授が総括に立ち、「実装するレベルでのセキュリティ」「既存サービスとの接続」等々、議論に上がったブロックチェーンの課題を整理し、「まだ“ブロックチェーン1.0”という感覚」だが、「だからこそまだまだ楽しめる。今日も盛り沢山の内容でハッピー」と笑顔を見せた。そして、ブロックチェーンを巡るアクションについて「もう少し様子を見るべき」「エンタープライズアーキテクチャーの必要性を考えるべき」と、2つの課題点を挙げた。

ブロックチェーンはワクワクする夢はあるが、同時に難解で、まだ多くの課題を抱えている技術だと言える。それを今回取り上げたことに対し、ファシリテーターを務めた残間氏は「確かに実証実験のレベルだが、今はどの企業も同時にスタートを切ったばかりの状態。そんな新進のベンチャーと一緒にやっていくことは、大企業の責務だと思っている」と語っている。
「豊洲の港から」は、8月に第4回ビジネスコンテスト本選、来年3月には世界8カ国でのグローバルオープンイノベーションコンテストを開催するほか、9月以降も翌1月まで定例会を開催し、今回のような熱いセッションを行っていく予定だという。
ここから始まる技術の可能性、どんなベンチャーの未来が開けているのか。これからも期待したい。

※1 L/C取引

Letter of Credit信用状を利用して行う国際貿易取引。輸入業者が相手国の輸出業者に対して発行するもので、信用状に書かれた条件を満たせば、銀行がその輸出業者に対して代金支払いを保障するもの。

※2 DNS

ドメインネームシステム(Domain Name System)の略で、 インターネット上の名前であるホスト名(ドメイン名)と、 インターネット上の住所であり、 数字で構成されるIPアドレスとを対応づける仕組みのこと。