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UK FinTechの衝撃

FinTechの中心地とされているロンドン。
「『豊洲の港から』powered by 英国大使館」では、
英国のFinTech企業14社とともにアライアンスや協業の可能性を探りました。

最先端のFinTechの可能性に触れられたのは
大きな収穫だった。

英日協業を目指して

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今、世界のFinTechの中心地は英国・ロンドン。そのロンドンで、FinTechイノベーションを推し進めているのが半官半民組織の「Innovate Finance」です。NTTデータは昨年来、グローバルオープンイノベーションビジネスコンテストをきっかけに同組織と協業を開始、2016年9月には日本の大手IT企業として初めて正式に加入し、さらに連携を深めていこうとしています。

1月19日に開催された『「豊洲の港から」powered by 英国大使館』では、英国・国際商務省、英国大使館、Innovate Financeの協力のもと、“INNOVATION is GREAT BRITAIN”と題し、英国のFinTechでのスタートアップ企業14社を会場に招いてのショートピッチを開催。コミュニケーションゾーンも設け、登壇企業と日本の企業が膝を交えて対話し、アライアンスや協業の可能性を探りました。

FinTechを支えるエコシステムを

NTTデータ オープンイノベーション事業創発室長の残間光太朗

NTTデータ オープンイノベーション事業創発室長 残間光太朗

冒頭は、オープンイノベーションフォーラム「豊洲の港から」の名物司会・NTTデータの残間光太朗が盛り上げます。着ている法被(はっぴ)を示して「これは日本のお祭りで着る伝統的な衣装。今日はFinTech祭りということで着てみた」と笑いを誘います。

そして「英国はFinTechの世界ナンバーワンの地。優れたソリューションが日夜問わず生み出されている。今日は集まった日本企業との間で新しいビジネスが生まれることに期待したい」と語りました。また、フォーラムリーダーを務める名古屋大学・山本修一郎氏も「ピッチ自体は短時間で物足りないかもしれないが、全体では長丁場のフォーラム。ぜひコミュニケーションゾーンでお互いの理解を深め、楽しんでほしい」と述べました。

英国側からも本イベントにかける期待の声が上がりました。駐日英国大使館国際通商部貿易対英投資ディレクターのクリス・ヘファー氏は、2015年からのNTTデータとの関係に触れて「英国FinTechの力を認めてくれているのだろうと思う。ぜひこの関係が、日本と英国の(FinTech)エコシステムの原動力になることに期待したい」と語ります。

また、英国国際通商省マネージングダイレクター兼対英投資業務最高責任者のマイケル・チャールトン氏は世界的に英国FinTechへの投資が拡大し、ローンチするサービスも増加していることに触れ、英国FinTech企業とのアライアンスのメリットを強調します。

「多くのスタートアップ企業が世界的FinTechビジネスの主導的地位にあり、UKの世界的優位性を守っている。UKは人材も豊富で革新的なアプローチにも優れていると思う。日本の企業のみなさんはともにFinTech業界で競い合うライバルではあるが、ともにFinTechを盛り立てる仲間でもある。今日は幅広いメニューの企業が揃った。ぜひ楽しみながら、ともにFinTechイノベーションを盛り上げていってほしい」と熱く語りました。

左から山本氏、クリス・ヘファー氏、マイケル・チャールトン氏

左から山本氏、クリス・ヘファー氏、マイケル・チャールトン氏

多種多様なサービスが揃う

登壇企業は、ロンドンの最先端スタートアップ企業14社。すでに実績もあり、後に山本リーダーが「いずれも完成度が高く、圧倒的だった」と述懐するほどのレベルの高さを誇ります。以下、14社のアウトラインとポイントを記します。

※写真は紹介順に左上から時計回り(以下同様)

※写真は紹介順に左上から時計回り(以下同様)

●CLearMacro――ジャイルス・アデュー氏
※ロボアドバイザー
柔軟且つ堅牢なロボアドバイザー。属人的なゆらぎがなく、安定したリターンを提供。大企業の機関投資家、仲介業、アセット管理者がターゲット。戦略的戦術的投資プラン策定も可能。ポートフォリオ作成にも利用できるほか、日本の状況に合わせたカスタマイズもできる。

●RiskSave――ダン・タマス=ヘイスティングス氏
※ロボアドバイザー
ビットコイン、AI、ビッグデータなどの技術を使って、今後10年以内に10倍以上になるとされる日本のデジタルアセットマネジメント市場への参入を検討中。ロボアドバイザリーはETF(上場投資信託)が主流だが、ETFを超えたロボアドバイスを目指し、スケーラブルなソフトウェアを安価に提供したいと考えている。

●The Floow――サム・チャップマン氏
※テレマティクス
自動車運転の安全性、交通安全の実現をミッションに、テレマティクスを活用し、運転動向の解析や保険料の適正化をサービスとして提供する。技術的には、ドライバーへのアドバイスやコミットも可能。OBD(On-board diagnostics)、スマホ、車上のデジタルデバイスなど端末は選ばない。価値の高いデータに変換し、リスクの洗い出しができる。

●Tradle――ジーン・ヴェイングリフ氏
※ブロックチェーン
KYC(Know Your Customer)すなわち顧客の身分確認サービスを提供する。金融、リース、小売、保険等あらゆる業界を超えて、すべてのセクターでKYCを共有し、業務の効率化を図る。ユーザーもシームレスな利用が可能になる。行政との共有も可能になるとしている。

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●Wirex――パヴェル・マヌーフ氏
※ブロックチェーン
ビットコインのラストワンマイルに対応。デビッドカードの機能を利用し、ビットコインを日常的に使用するスキームを構築。ビットコインのクロスボーダー性を活かし、バックグランドでのみ使うシステムや、金融機関だけでは解決できない領域で部分的に使うこともイメージしている。現時点で130カ国40万人が使用している。

●Paysafe――溝江茂雄(みぞえ・しげお)氏
※決済・送金
「e-wallet」をベースにした送金システム。会員間、加盟店舗間で瞬時に送金できる。200カ国40通貨24言語に対応し、5000万ユーザーが利用している。ネットプリペイドではマスターカードが対応している。

●Currency Cloud――スティーブ・レモン氏
※国際送金
国際送金用のペイメントエンジン。型としてはAPIのセットとなる。グローバルなペイメントカンパニーをターゲットにしている。「Standard Bank of South Africa」ではわずか3ヶ月でブロックチェーンに対抗するペイメントインフラを構築し稼働させた実績もある。

●World First――ケイショ―・チョー氏
※外為・送金
素早く安価な国際送金システム。手数料がとにかく安いことに加え、KYCから口座開設まで、すぐ利用できるメリットもある。現在100種類の通貨に対応しており、APIも提供する。OEM的にビジネス支援も行っている。

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●Divdoc――ポール・ダンコンブ氏
※コンプライアンス
投資業におけるコンプライアンス対応のフォーム等の作成をオンライン化、デジタル化するシステム。エージェントがLinkdinのようなグローバル・ネットワークで外部の専門家らとつながり、申告を簡便化させ、コストカットや効率化が可能に。

●FundApps――アンドリュー・ホワイト氏
※コンプライアンス
RegTech的ソリューション。金融機関間を横断的につなぎ、サービスとユーザビリティの向上を実現する。

●Edgefolio――レオ・ガスティーン氏
※ヘッジファンド
投資家向けの解析ツール。マルチソースデータ、インターフェイスのカスタマイズ等が特徴。フリーツールで提供しており、プレミアムバージョンが有料となっている。

●Opportunity Network――アイリス・タン氏
※ビジネスマッチング
富裕層やCEOなどの企業トップ層とのタッチポイントを作るソリューション。資金調達、ビジネスパートナーの獲得、原料調達等々、要望に応じたマッチングを取り扱う。平均2ヶ月で希望に沿う相手が見つかる。129カ国で展開。

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●PixelPin――ジョージア・スティール・マシュー氏
※サイバーセキュリティ
パスワードの代わりに指定した画像の特定の地点をタッチするだけで、認証・ログインが可能な認証システム。画像の選定、タッチポイントの選択もすべて自分で行うため、非常にセキュア。ワインタイムパスワードとセットにするバリエーションもある。

●Darktrace――ジョン・カーチ氏
※サイバーセキュリティ
人間の自己免疫システムをモチーフにしたサイバーセキュリティシステム。複雑化するサイバー空間から生まれる未知の攻撃への耐性を付与させる。3Dスレッドビジュアライズシステムとディープラーニングでソフトを育てていく。

※1 RegTech

FinTechの一分野で、金融業における「規制」に関する技術を指す。顧客認証の技術やコンプライアンスに関するもの、新規則の影響把握等が含まれる。

高い期待を具体的な取り組みに結びつけるには

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魅力的な日本市場

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全体では4時間にも及ぶ非常に長いイベントではありましたが、その内容の豊富さ、ユニークさから時間があっという間に過ぎたプレゼンテーションタイムでした。

終了時にコメントを求められたフォーラムリーダーの山本氏は「とにかく今はびっくりしたの一言に尽きる。あまりの完成度の高さに驚かされた。今までは、FinTechといってもどう使うの? というようなものが多かったが、今回登場したものはいずれも実績があり、ただただ圧倒されたというのが私の感想」と最大級の賛辞。

英国国際通商省FinTechセクターのスペシャリスト、シャウル・デイビッド氏も「長い1日だったが実りある、生産性の高い1日ではなかったか」とコメント。「今日はUK FinTechの中のあらゆる領域からスタートアップ企業を集めた。いずれも金融業界を活性化する可能性の高いものばかり。日本企業と協働することで、日本の金融サービスが変わることに期待したい」とFinTech産業の拡大と、ひいては英国企業の日本市場参入への熱い期待を語りました。

プレゼンテーションの合間、休憩を通してコミュニケーションスペースでは非常に熱心なディスカッションが行われていました。また、終了後の懇親会でも、積極的にコミュニケーションする企業人の姿も見られました。

今回、英国企業側が非常に熱意を持って参加している点が印象的でした。The Floowのサム・チャップマン氏は、イベント途中の段階ですでに4社からアプローチを受けており、コネクション作りを今回の来日の目的としている氏としては充分な手応えを得られていた様子。

同社は実は3年前に同サービスを持って日本へ売り込みに来たことがありましたが、当時はまったく相手にもされていなかったそうです。しかし、今回は「日本企業側の理解も進んでいると感じた。タイミングとしてはまさに“今”。英国のFinTech技術が大いに参入できる可能性を感じている」とコメント。

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Wirexも非常に積極的に日本企業にアプローチしていた企業のひとつ。同行していた同社、インナ・ターパン氏は熱心に懇親会場を回るとともに、マスコミ関係者にも積極的にアプローチ。「日本市場には大きな可能性がある。参入するためには、PRにも力を入れたい」と有力PR企業を探していることも明かしています。

ある日本の証券会社からの参加者は、「言語の壁があって100%の理解はできていないかもしれないが、最先端のFinTech企業を知り、その可能性に触れたことは大きな収穫だった。」と本イベントを高く評価しています。その一方「本格的なビジネスに発展させるためには、双方が踏み込んでいく必要がある」と実際の活用は一筋縄ではないという見解を示しました。

これは別の金融機関からの参加者も同様で「(UKスタートアップの)完成度とレベルが高いことに驚いた。それだけ、日本として、そういった仕組みをどう取り入れていくか、冷静に考える必要がある」と、慎重な態度を示しました。

FinTechは次世代の社会インフラであり、海外で作られた仕組みがそのまま簡単に導入できるわけではありません。しかし、最前線をいく海外のスタートアップ企業のアイディアや技術と日本のニーズを把握しているお客様をどうすり合わせていくのか、がNTTデータのようなICT社会インフラを展開してきた企業の役割であり、引いては日本のFinTech拡大の鍵とも言えるかもしれません。

見えてきたギャップを埋めてWin-Win-Winとなる新たなビジネススキームを構築することこそが、「さあ、ともに世界を変えていこう」という、「豊洲の港から」が目指す新たな事業創発につながると感じさせれた定例会でした。

オープンイノベーションフォーラム「豊洲の港から」


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