2017. 05. 11 Update !

イマ旬

NTT DATA Technology Foresight 2017シリーズ~Vol.10技術トレンド「コラボレーションデザイン」

NTTデータが導出した2017年の情報社会や技術のトレンドを全10回で紹介。
最終回は技術トレンド「コラボレーションデザイン」です。

関本佳之
株式会社NTTデータ 技術革新統括本部 技術開発本部
シニアエキスパート 関本佳之

イマ旬の注目キーワード
デザイン思考

APIエコノミーの進展

インターネットを経由した既存のサービスの簡易な連携、APIエコノミーと呼ばれる仕組みにより、新たなサービスの生み出し方は近年大きく変わり、アイデアをビジネスとして実現させるスピードが極めて早くなりました。小さい規模のスタートアップであっても品質の安定した既存のサービスをインターネット経由で呼び出して組み合わせ、短いリードタイムでリリースすることで、その価値を世に問うことが出来ます。

そのスピードを示す例として、自家用車とその所有者をタクシーとドライバに仕立てて報酬を提供するライドシェアサービスをいち早く実現し急成長したUberがよく知られています※1。彼らはビジネスを始めた段階ではスマートフォンのアプリケーションとその関連部分以外はことごとく外部から調達していました。

利用者とドライバに乗車地点や目的地を伝え適切なルートを提示するナビゲーションシステム、クレジットカード決済、電話やメッセージングサービスといった本来サービスの基幹を構成する要素すら、自らは所有していない既存のサービスを活用したのです。

さらにライドシェアサービスが評価を得て安定したサービスと認識されることで、自らもAPI連携で他のサービスから利用される立場となります。ホテルやレストランのサイトにボタンとして埋め込まれたライドシェアサービスは、宿泊客や食事客に移動手段をワンクリック提供するサービスとして連携し利用されています。

IoTプラットフォームで加速するAPIエコノミー

今後はIoTプラットフォームもAPIエコノミーの一員として活用されていくと考えられます。IoTプラットフォームは、多種多様なIoT機器一つ一つに対するネットワークを含めた統合的なマネジメントシステム、それらの機器と連携するサーバ側システム、収集された情報の加工・分析システムが組み合わされています。

工場の製造機器や車両に取り付けたIoT機器を管理し、稼働状態、燃料消費量、部品の状態などを収集、その膨大な情報を分析することで機器の異常検知・適切な交換時期の把握を実現している例があります。こうしたIoTプラットフォームを各企業内部に閉じて利用する段階からオープンに利用させる段階へ移行が進むことでAPIエコノミー同様の価値を生み出すと考えられます。

ある通販会社Amazonが公開しているクラウド型音声対話インターフェース「Alexa」は、彼らが各家庭に普及させたIoT機器「Amazon Echo」で利用され十分な実績を積み進化している上、オープンなAPI連携も提供しています※2。2017年1月に北米で開かれた開催された家電ショーCESでは、展示された実に700もの製品がこの連携を活用して、音声対話が可能な製品として登場しました。

ここで接続された数多くの製品とそこに繋がる多数のサービスが連携し、よりスマートな体験を提供するプラットフォームに成長する可能性は高いでしょう。

ITによるUX革新

サービスはITの力によって、より自然なUXを追求できる段階に入っています。特に北米でデモが公開された「レジのないスーパー」「Amazon Go」はこれまで慣れ親しんだUXをIT技術で完全に書き換えた事例と言えるでしょう※3。この店舗には多数のIoT機器、カメラやセンサーが備え付けられており、顧客は入店時にゲートにバーコードをかざすことで認証され、以降店内での動きはそれらのIoT機器によって常に追尾されます。

このトラッキングは店の中での顧客の位置だけでなく、棚に手を伸ばして商品を手にする動作、迷って棚に戻した動作まで捉え続けます。顧客は必要な商品を手に取りそのまま店を出てスマートフォンを確認すればそこには何をいくつ購入したか表示され決済が完了しています。まさに必要なものを持って帰るだけのUXであり、全く新たなUXの形と言えるでしょう。

商品をカゴに入れ、レジに並ぶ、レジ打ちを待つ、袋詰めを待つという行為は必然なのか、レジに人間を配置する必然性はあるのかという問いが生み出したUXの革新であり、その革新は発展するIT技術が可能にしたと言えるでしょう。

継続的UX革新

UXの革新はIT技術そのものにもおよぶでしょう。例えばあらゆるサービスの起点となっているスマートフォンのアイコンを詰め込んだ画面を凝視し、目的の操作を選び出してタッチする操作は「直感的」とされていますが本当でしょうか。スマートフォンをスムーズに利用できるまで、実は多大な習得時間を要しているのではないでしょうか。スマートフォンの平面な画面にとらわれずVRやAR、プロジェクションマッピングなどを駆使したインタラクションも必要かもしれません。

またITによるUX革新は技術の無秩序な導入とも異なるものです。技術的に可能ならまずやってみるというダイナミズムはユーザのフィードバックを受けて後退することもあるでしょう。例えば「レジのないスーパーAmazon Go」でが、例えばある商品を手に取った瞬間ARを駆使した広告が流れし2個買えば半額といったキャンペーンをする、カップケーキに手をかけたところで迷う動作を見せる顧客に購買意欲を高める音楽が流れ、映像が変化するといった仕掛けも不可能ではありません。

しかし、こうしたアイデアが果たして適切か、ユーザフィードバックを得て改善を繰り返す真のUXのサイクルが実現されるなら、より穏当な仕組みに取り替えられることは明らかです。ユーザを見つめた、継続的で真摯なUX革新こそが人とITのコラボレーションデザインの姿と言えるのではないでしょうか。

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